資格の雑談

【判例から学ぶ賃管士】雨漏り4回でも賃料全額拒否はできない!修繕義務違反があっても使用収益が可能なら賃料支払義務は残る・連帯保証人への請求が認められた実際の事例を解説

ペンギン社長

不動産業界歴約20年・代表歴約6年の現役不動産会社代表。 宅建士・賃貸不動産経営管理士・マンション管理士・ 管理業務主任者・FP2級など5資格以上を保有。 40代で賃管士に挑戦し1回目不合格を経て2回目で合格。 実体験をもとに不動産業界に興味がある方・ 入りたての方へ向けて役立つ情報を発信しています。

※本記事にはプロモーションが含まれています。

📚 この記事は賃貸不動産経営管理士の試験知識を実際の判例・実務で確認する「雑談シリーズ」です。試験勉強の息抜きにもどうぞ!

「大家さんが雨漏りを直してくれないから家賃を払わなくていいよね?」
「修繕してくれないから退去したのに、なんで賃料を払わなきゃいけないの?」
「連帯保証人にまで請求が来るの?」

不動産管理の現場でも実際によくある相談です。

今回はおなじみ不動さんふーちゃん先輩の会話を交えながら、

実際にあった判例をもとに

賃貸人の修繕義務違反があっても賃料支払義務が残る理由

徹底解説します。

出典:(一財)不動産適正取引推進機構「実際にあった判例から」(at home TIME 2026年8月号)


この記事でわかること

  • 修繕義務違反があっても賃料全額拒否できないケースとできるケース
  • 連帯保証人が未払賃料の支払を求められた判例の経緯
  • 退去時清掃費用特約の有効性
  • 賃管士試験の「修繕義務」と実務の接点

まず事案のあらすじ

登場人物役割
X(法人)賃貸人(大家さん)
A(個人)賃借人(入居者)
Y(個人)Aの連帯保証人
B(宅建業者)媒介した不動産会社

【事案の流れ】

平成29年12月
→ X・A間で都内マンション最上階の賃貸借契約を締結
月額賃料14万円(管理費込み)
敷金・礼金各13万5,000円
Yが連帯保証人として保証契約を締結

平成30年〜平成31年
→ 計4回の雨漏りが発生
→ AはXに修繕を依頼
(浴室排水口の異臭対応も要求)

平成31年4月
→ Aが「Xは修繕義務を果たさない」として退去
→ 今後の賃料支払いを拒絶する旨をXに通知
→ 5日後に鍵を返却
→ 宅建業者Bにも「契約解除する」旨の書面を送付

令和元年5月
→ XがYに対して127万円余の支払を求めて提訴
・未払賃料
・退去時清掃費用(特約あり・4万円税別)
・B宛書面によるXの信用毀損への損害賠償

不動さん:

不動さん
4回も雨漏りしたのにXが修繕してくれなかったから退去したんですね。退去したAは悪くないんじゃないですか?

ふーちゃん先輩:

ふーちゃん
Aの気持ちはわかる。でも法律的には「修繕してくれないから賃料を全額払わなくていい」というのは限られた場合にしか認められない。これが今回の裁判のポイントだよ。

裁判所の判断①:修繕義務違反があっても賃料は払うべきか

争点Aの主張裁判所の判断
賃料不払の正当性「Xが修繕義務を果たさないから賃料を払わなくていい」×:賃料全額拒否できるのは使用収益が全面的に不能な場合のみ
判断の根拠-雨漏りはあったが建物の使用収益が全面的に不能とは言えない
参照判例-最高裁昭和34年12月4日判決
結論-Aの賃料支払義務は残る→Yへの請求を一部認容
⚠️ 重要な法律の原則:賃貸人の修繕義務違反があっても賃借人が賃料の全額を拒否できるのは目的物の使用収益が全面的に不能な場合に限られます(最高裁昭和34年12月4日判決)。雨漏りがあっても住める状態であれば賃料支払義務は残ります。

不動さん:

不動さん
雨漏りが4回もあったのに住める状態と判断されるんですね!

ふーちゃん先輩:

ふーちゃん
そう。「雨漏りがある=使用収益が全面的に不能」とはならない。最上階でも雨漏り以外の部分は普通に使えているなら「全面不能」にはならないと判断される。修繕義務違反は別途損害賠償請求の対象になり得るが賃料全額拒否とは話が別だよ。

ペンギン社長:

ペンギン社長
実務でも「大家さんが修繕してくれないから家賃を払わない」という相談は本当に多い。でも法律的には認められない場合がほとんど。同機構への相談でもこの誤解が多いと指摘されているよ。管理会社として入居者さんに正確に説明できることが重要だよ。

裁判所の判断②:退去時清掃費用特約は有効か

争点内容裁判所の判断
清掃費用特約の有効性契約時に「退去時清掃費4万円(税別)は賃借人負担」という特約あり✅ 有効:Aに過度な負担でもなく特約は有効
原状回復との関係-合理的な範囲の特約は有効という原則に沿った判断

不動さん:

不動さん
清掃費用の特約は有効なんですね!

ふーちゃん先輩:

ふーちゃん
そう。原状回復のガイドラインでは通常損耗は貸主負担が原則だが退去時清掃費用の特約は合理的な範囲であれば有効とされることが多い。4万円という金額も過度ではないと判断されたよ。これは賃管士試験の「原状回復の特約の有効性」という論点と直結するよ。

裁判所の判断③:B宛書面による信用毀損は認められたか

争点Xの主張裁判所の判断
信用毀損による損害賠償「AがB(仲介業者)に送った書面でXの信用が毀損された」×:毀損の程度が明らかでないとして採用しなかった

不動さん:

不動さん
退去理由を仲介業者に書面で送っただけでは信用毀損にはならないんですね!

ふーちゃん先輩:

ふーちゃん
そう。退去理由の説明書面は「自分の権利を説明したもの」として認められた。信用毀損を認めてもらうためには毀損の程度を具体的に立証する必要があるよ。

判決の結論

項目結果
未払賃料✅ Yの支払義務を認めた(敷金を控除した額)
退去時清掃費用✅ Aの支払義務を認めた
信用毀損の損害賠償❌ 採用しなかった

ペンギン社長:

ペンギン社長
最終的に連帯保証人Yが未払賃料を支払う義務を認められた。Yからすれば「Aが修繕してくれないと言ったから退去した」というAの話を信じていたのに裁判で支払義務が認められた。連帯保証人の責任の重さを改めて実感する判例だよ。

賃管士試験との接点:この判例で確認できる試験知識

試験で出るポイント今回の判例との関係
賃貸人の修繕義務修繕義務違反があっても使用収益が可能なら賃料支払義務は残る
賃料減額請求と全額拒否の違い修繕義務違反は賃料減額請求の根拠にはなり得るが全額拒否はできない
原状回復の費用負担・特約の有効性清掃費用4万円の特約は合理的な範囲で有効と判断された
連帯保証人の責任範囲賃借人の債務不履行に対して連帯保証人も支払義務を負う
解約の通知方法「2ヶ月前予告で書面解約可・解約時はBにも通知」という契約条項が争点に

ふーちゃん先輩:

ふーちゃん
この判例は賃管士試験の「修繕義務」「原状回復」「連帯保証」という3つの頻出テーマが一つの事案に凝縮されている。実際の判例を通じて学ぶことで試験知識が実務でどう使われるかが理解できるよ。

参考判例:エレベーター停止のケース(令和3年)

項目内容
事案老朽化エレベーターが度々停止する建物2階の店舗・賃借人が賃料(月額35万円)を遅滞・停止
争点エレベーター停止を理由に賃料全額を拒否できるか
裁判所の判断店舗は営業可能→賃料減額請求はできても全額拒絶まではできない
結論2ヶ月分超の不払いから信頼関係の破壊を認め→賃貸人の解除・明渡し請求を認容
教訓設備の不具合があっても使用可能なら賃料全額拒否はできない・不払いが続くと解除されるリスクがある

不動さん:

不動さん
エレベーターが頻繁に止まっても賃料全額拒否はできないんですね!

ペンギン社長:

ペンギン社長
2階だから階段でも営業できる状態だった。設備の不具合は賃料減額や損害賠償の根拠になるが全額拒否ができるのは「全面的に使用収益できない場合のみ」という原則は一貫しているよ。不払いを続けると逆に解除されて退去させられるリスクもあるから注意が必要だよ。

まとめ:修繕義務違反と賃料支払義務の4大ポイント

  • 修繕義務違反があっても賃料全額拒否できるのは使用収益が全面的に不能な場合のみ(最高裁昭和34年判決)
  • 雨漏り・エレベーター停止などの不具合は賃料減額請求や損害賠償の根拠になり得るが全額拒否とは別の話
  • 退去時清掃費用の特約は合理的な範囲で有効・連帯保証人もこの義務を負う
  • 賃料不払いが続くと信頼関係の破壊として賃貸借契約を解除されるリスクがある

ペンギン社長:

ペンギン社長
管理会社として「修繕してくれないから家賃払わない」という入居者さんに正確に説明できることが重要。賃管士の知識がそのまま実務で使える典型的な事例だよ。試験勉強で覚えた知識がこういう形で実務に活きてくるのが賃管士の面白いところだよ。

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